ARTPROJECT 2ND
MIESROHE × HARUMI SHIMIZU
25 Summer Campaign “Journey of Day Dream”
ファッションとアートが織りなす世界で新たな表現を追求する、ミースロエの「アートプロジェクト」。独創的なアイテムを通じてポジティブなメッセージを届けるこの企画で、今シーズンは写真家・清水はるみ氏と「白昼夢」を着想源にしたコラボレーションが実現。両者の感性が交差して生まれた唯一無二のプロダクトを、 二人の対談を通して掘り下げる。
COLLABORATION OF
FASHION AND ART
DIALOGUE
MIESROHE DIRECTOR NORIKO SAKAUE
PHOTOGRAPHER HARUMI SHIMIZU
視点をずらす、心を解き放つ
坂上:今回はるみさんとアートプロジェクトをご一緒することになり、始まる前からとてもワクワクしていました。
清水:私もすごく楽しみでした。「Journey of Daydream;白昼夢の旅」というテーマにも惹かれましたね。
坂上:夏ってすごくエネルギッシュなイメージですが、エモーショナルな季節でもあるんですよね。暑い一日が終わっていく夕焼けの空とか、花火のあとの残り火とか、強弱の合間にある曖昧な美しさに、私は心を奪われることが多くて。そんな現実でも幻想でもないまどろんだ夏、「白昼夢」を旅する世界観を表現したいと思ったんです。暑さや喧騒から逃れる、静かな癒しの空間を表現したいなと。
清水:張り詰めた気持ちがふっと解けて、ぼんやりとしている感覚ですよね。旅をしているとそんな瞬間が時々あります。たとえば長い旅路を経て最後に辿り着いた街で、帰国前に「ああ、もう何もしたくないや…」なんて空っぽの状態になったり。でもそういう時って不思議と、今まで気づかなかったところが主張して見えてくるんです。屋根の上に立つ無数のアンテナが突然気になってみたり(笑) ものの見え方や視点がいい意味でずれるから、全然違う方向から光やアイデアが差し込んできたりするんです。
坂上:すごく共感します! 過酷さと癒やし、情熱と冷静、強さと柔らかさ…、そんな相反するものを掛け合わせるのが私も好きです。そこで生まれる“曖昧な美しさ”が、着る人の意識を現実から少し遠ざけ、自由な世界に持ち上げてくれるように思うんですよね。洋服自体、体を守ったり気温に合わせて着る機能性がある一方、夢を見れたりワクワクできるもの。人がリアルに身を置きながら、どこか気持ちを解放する「白昼夢」の感覚を、ファッションは叶えられると思うんです。そんな考えが頭をめぐる中、はるみさんの写真に出会い、日常に溶け込みながらも心に寄り添うエモーショナルな力に共感して、今回お声がけさせていただきました。
新たなレイヤーから生まれるもの
清水:白昼夢を表現する上で、坂上さんから「自然のテクスチャー感を取り入れたい」と伺い、提案させていただいたのが、この長瀞の渓流でしたね。20代の頃に初めてこの場所を訪れた時の感動を、私も呼び起こされた気がします。
坂上:岩盤の芸術的な縞に思わずシンパシーを感じました。硬質でありながら、水や風の作用で波紋や曲線が生まれていて、すごく艶やか。先ほどの話にもありましたが、相反する二つの現象がうまく重なり合っていますよね。“マニッシュだけどセンシュアル”というミースロエのフィロソフィにも似ていて、ただただ居心地が良かった。色も、白、グレー、オレンジ、ライトブルーと様々なトーンが織り成していて、けして単調ではないんですね。
清水:岩なんだけど波のようだったり、土星の表面みたいに見えたり。静かながら、細部を様々に捉えられるところも、ミースロエの世界観に通じているように感じました。また、小石と水流の作用で深く削れていったポットホールや地下深くで長い時間をかけて積み重なった地層を眺めていると、過ぎし時代に想いを巡らせてしまう。そんな時間のレイヤーが「白昼夢」とリンクしました。
坂上:そこに、はるみさんが旅先で集めてきたガラスの破片を岩肌に重ねて、新たな層を生み出す撮り方にも魅了されました。キラキラとした光の放射が、まるで時空の重なりのようで…。
清水:いつかの夏を懐かしむ気持ちを、どうやったらビジュアルに落とし込めるかなと考えました。私自身が拾い集めてきたガラスというパーソナルな要素を重ねることで、白昼夢の光の感じを表現しつつ、より奥行きも持たせられればと思いました。
坂上:そのままの美しさだけではなく、新しいレイヤーが加わることで、楽しみが広がる。それこそが、このアートプロジェクトの醍醐味なのかもしれません。それはミースロエやコラボレーションするアーティストの方だけでなく、着る人の感性もレイヤーの一つだと思うんです。それぞれの解釈で自由に服を楽しんでもらうその先で、もっともっと自分を発見したり、個性の解放につながっていけたらいいなと思います。
写真を纏い、自由をまとう
坂上:パリの街角で撮られた写真を拝見したとき、誰もがアートを身につけやすいという点で、まずはフォトTを作りたいと思いました。
清水:壁にポスターが貼り重ねられては破れてを繰り返して、タバコを吸う女性の姿だけが残された様子の写真ですね。
坂上:そうです。そこには確実に時間のレイヤーが存在していて。遠い記憶の中を旅しているような感覚が、まさに白昼夢だと感じました。
清水:私の写真には、そのように単独で意味が伝わるようなものと、今回渓流で撮ったように、表面的な模様や質感などにフォーカスを当てて、複数枚で構成しているものがありますね。
坂上:石の色合いやガラスを重ねたときの透明感が美しい写真は、そのテクスチャーを生地の柄やシースルーバッグの素材に溶け込ませたいというアイデアが浮かびました。そうすることで、日常的に心の中に白昼夢を宿し、気持ちを解放していけるような気がするんです。この岩場だって何も考えずに歩いたら、なんでもない場所に感じると思うけど、自由な心を持って視点を変えることで、美しさや感動を見つけられるのだから。
清水:なんだか不思議です。今回撮り集めた自然のテクスチャーが、坂上さんのデザインを経て、服やバッグになって街に出ていくということが。
坂上:そうですね。私たちが心を奪われた一瞬の美しさが、誰かが永く大切にしたい美しさになるかもしれない。
清水:白昼夢の旅が、誰かの手に渡って続いていくようなイメージですね。
坂上:「今にときめき、長く愛する」というのもミースロエのフィロソフィなんですが、人やライフスタイルの多様化が進む中、ファッションはもう、トレンドかそうじゃないかという物差しだけでは測れないと思うんです。現実か幻想か、過去か未来か、ファッションかアートかなどの境界線を引かず、もっと曖昧で自由な意識の中にいることで、「これが好き!」と堂々と言える自分らしさを手に入れる。それが幸せの本質なんじゃないかと。はるみさんと生むプロダクトが、そんな心地よい生き方を応援するファクターになれたらいいなと思っています。
“JOURNEY OF DAY DREAM”
PRODUCT
Miesrohe × Harumi Shimizu
Inspired by Product 1“One piece”
Miesrohe × Harumi Shimizu
Inspired by Product 2“T-Shirt ”
Miesrohe × Harumi Shimizu
Inspired by Product 3,4,5
“T-Shirt & Bag & Scarf”
Miesrohe × Harumi Shimizu
Inspired by Product 6“T-Shirt”
UNTITLED, PORTO
Miesrohe × Harumi Shimizu
Inspired by Product 7“T-Shirt”
UNTITLED, PARIS
Miesrohe × Harumi Shimizu
Product 8“Siershirt”
HARUMI SHIMIZU
1989年生まれ、東京在住。スタジオアシスタントと書店での写真集担当を経てフリーカメラマンに。個人的には旅先でのスナップ写真や、博物学的な興味に基づいたスティルライフ写真を撮影している。自然の中に立つ十字架のシリーズや、突然変異・人工改良によって生まれた動植物を記録するシリーズなどに継続して取り組んでいる。近年の展示にKYOTOGRAPHIEでの企画展”10/10 現代日本女性写真家たちの祝祭”(HOSOO Gallery, 2022年)や、個展”The Plants in the Voynich Manuscript”(IMA gallery, 2019年)などがある。
ARTPROJECT 2ND